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蘇りの地、熊野へ。歩いて、食べて、祈って、眠って…熊野古道伊勢路で「新しい自分」に会いに行こう。後編

今から約400年前の江戸時代を最盛期として、現代も多くの人々が旅する、巡礼の道・熊野古道。 深い山々が連なる厳しい旅路を、人々はなんのために、どんな想いで歩んできたのでしょうか? 今回は、いよいよ「蘇りの地」と言われる聖地・熊野へ足を踏み入れます。 前回に引き続き、実際に熊野古道伊勢路を歩きながら、その本質や魅力を探っていきましょう。

前編のあらすじ

伊勢神宮から熊野三山という、2つの聖地を結ぶ道が、全長約170kmにおよぶ「熊野古道 伊勢路」です。

この記事は2日間にわたる熊野古道伊勢路の歩みのうち、後編である2日目の様子をまとめたYouTube動画と連動した記事です。

今回も、ライター兼案内役の私、玉置侑里子(たまおきゆりこ)と、YouTubeチャンネル「オトナ女子の山登り」の山下舞弓(やましたまゆみ)さんと一緒に、この道を歩く旅人のひとりとなって、その本質と魅力を探ってみたいと思います!

 

1日目の様子をまとめた前編の記事・YouTube動画は以下のボタンから見ることができるのでこちらをチェックしてから後編の記事・YouTube動画をご覧になるとより深く熊野古道伊勢路の魅力を見つけることができます。

 

自然石を組んだ圧巻の石畳が残る「松本峠」

2日目も引き続き、熊野古道伊勢路の旅を続けていきましょう!

二木島(にぎしま)の宿を出発し、二木島峠、逢神坂(おうかみざか)峠、波田須(はだす)の道、大吹(おおぶき)峠を越えた先にあるのが「松本峠」です。

 

松本峠には、とても美しい石畳が残っています。

中でもみどころなのは、自然石をそのまま積み上げて作る野面乱層積(のづららんそうづみ)の石畳。

松本峠の登り口に入ると、すぐに圧巻の石畳道が現れます。

 

このあたりには、熊野酸性岩とよばれる、約1500万年前の火山活動で生まれた石が多く残っており、それらを生かして石畳が作られました。

苔むした石畳の道が延々と続く景色は、まさに圧巻です。

 

松本峠の頂上は、木漏れ日が美しい竹林になっていて、お地蔵様が立っています。

このお地蔵様には、なんと鉄砲で撃たれた跡が残っています。江戸時代、ちょうどお地蔵様が建てられた日の夜中にここを通りかかった猟師が、妖怪と間違えて撃ってしまったのだそうです。

 

詳細情報

名称

松本峠(熊野古道伊勢路)

電話番号 0597-89-0100(熊野市観光協会)
公共交通機関でのアクセス

・JR・近鉄「津駅」からJR紀勢本線「熊野市駅」まで列車で約2時間15分

・JR紀勢本線「熊野市駅」から三重交通バスで「鬼ヶ城東口」下車すぐ

車でのアクセス 熊野尾鷲道路「大泊IC」から国道42号経由で南へ約2分

広い海岸の道を一望する展望台へ

さて、ここからは、少し熊野古道をそれて、眺めのいい海側のルートを歩いてみましょう。

松本峠のてっぺんから「鬼ヶ城城跡」と書かれた道標に従って、左手に進みます。

しばらく山道を歩くと見えてくるのは……景色の美しい展望台!

 

この展望台からは「七里御浜(しちりみはま)」と呼ばれる海岸線を一望できます。

七里御浜はその名前の通り、約22kmに渡って続く、日本で一番長い砂礫海岸です。

この七里御浜は、熊野古道のルート「浜街道」にもなっています。浜街道を歩いた江戸時代の旅人たちは、この松本峠から先、海岸の砂利の上を歩いて熊野速玉大社を目指しました。

 

これまで深い山の中を歩いてきた旅人にとっては、ひとつの区切りの地点。広がる海を目にした瞬間は、とても感慨深いものがあったのではないでしょうか。

詳細情報

名称 浜街道(七里御浜)(熊野古道伊勢路)
住所 熊野市 ・御浜町・紀宝町
電話番号 0597-89-0100 (熊野市観光協会)

大自然の造形美に驚く、鬼ヶ城

海を一望する展望台を過ぎて下っていくと、この地にあるもうひとつの世界遺産「鬼ヶ城」へとたどり着きます。

この鬼ヶ城は、熊野灘に面して、約1kmも奇岩怪石の風景が続いています。

約1500万年前の火山活動によって積もった灰が固まった凝灰岩(ぎょうかいがん)が、長い年月を経て波に削り取られて、このとても不思議な形になりました。

鬼ヶ城の周りには遊歩道が巡らされており、松本峠歩きと一緒に散策を楽しめます。

 

熊野の地には、こうした巨岩や不思議な大自然の造形美をみられる場所が数多くあります。

ここまで歩いてたどり着いた昔の旅人にとっては、まるで異世界のように感じられたかもしれませんね。

詳細情報

名称 鬼ヶ城(熊野市)
住所 熊野市 木本町
電話番号 0597-89-1502(鬼ヶ城センター)
公式URL http://onigajyo.jp/
駐車場

あり 72台

公共交通機関でのアクセス JR紀勢本線「熊野市駅」から三重交通バスで「鬼ヶ城東口」下車すぐ
車でのアクセス 熊野尾鷲道路「熊野大泊IC」から国道42号経由で南へ約1分

鬼ヶ城の遊歩道の入り口には「鬼ヶ城センター」という施設があり、この地域の名産品のお土産の購入はもちろん、レストランで食事をすることもできます。

おすすめは「熊野灘産鯛とマグロの紅白丼(税込1,100円 お味噌汁とお漬物もセット)」。

 

熊野灘は、海岸に比較的近い位置でも水深が深いため、本来なら海岸から離れた沖合にしか生息していないおいしい魚がたくさん捕れます。

黒潮と大地の恵みを味わって、この先も元気に旅を続けるパワーをチャージしていきましょう!

詳細情報

名称 鬼ヶ城センター
住所 熊野市 木本町1835-7
電話番号 0597-89-1502
公式URL https://onigajyo.mie.jp/
営業時間

平日10:00~17:00/土日祝9:00~17:00(季節により変更がございます)

車でのアクセス 熊野尾鷲道路「熊野大泊IC」から国道42号経由で南へ約2分

もうひとつの世界遺産、獅子岩

この付近の熊野古道沿いには、世界遺産となっているスポットがいくつもあります。こちらの「獅子岩」もそのひとつ。

鬼ヶ城と同じく岩が波によって削り取られてできました。

大きさは約25mあり、大きな獅子が、天に向かって咆哮するかのような形です。近くを流れる井戸川の上流にある、大馬神社(おおまじんじゃ)の狛犬とされています。

詳細情報

名称 獅子岩
住所 熊野市 井戸町
電話番号 0597-89-0100(熊野市観光協会)
公式URL http://kumano-kankou.info/tourism/interest
公共交通機関でのアクセス JR紀勢本線「熊野市駅」から徒歩で約10分
車でのアクセス 熊野尾鷲道路「熊野大泊IC」から国道42号経由で南へ約3分

イザナミノミコトを祀った花の窟神社

獅子岩を越えてもうしばらく海岸沿いを歩くと見えてくるのが、日本最古の神社とされる「花の窟(はなのいわや)神社」です。

鳥居をくぐり、境内を奥へと進んでいくと現れるのは……高さ約45mの巨大な岩の壁。

鬼ヶ城と同じ凝灰岩でできており、白く見える岸壁には風化による穴がいくつも見られ、とても神秘的で迫力のある佇まいです。

 

この巨岩が御神体となっており、神々の母である伊弉冊尊(イザナミノミコト)と、向かいにある高さ18mの岩には、火の神である軻遇突智尊(カグツチノミコト)が祀られています。

詳細情報

名称 花の窟神社
住所 熊野市有馬町130
電話番号 0597-89-2881
公式URL http://hananoiwaya.jp/
駐車場 あり 道の駅熊野・花の窟と共通
公共交通機関でのアクセス JR「熊野市駅」から新宮駅行きバス2分「花の窟」下車
車でのアクセス 熊野尾鷲道路「熊野大泊IC」から国道42号経由で南へ約10分

浜辺を歩く熊野古道・七里御浜

花の窟神社から先は、江戸時代の旅人たちにならって、七里御浜海岸を歩いてみましょう。

この花の窟神社を起点として、熊野古道伊勢路は、山側を通る「本宮道(ほんぐうどう)」と海岸沿いを通る「浜街道(はまかいどう)」に分かれます。

七里御浜の海岸は、大粒の砂利で埋め尽くされているのが特徴です。

実際に砂利の上を歩いてみると、足を取られて結構大変!この道を20km以上歩いていたなんて、江戸時代の旅人たちはなんて足が丈夫だったのだろう……と感心してしまいます。

太陽の光を反射して、水面がキラキラと光っています。

熊野は「補陀落渡海(ふだらくとかい)」という信仰がさかんな土地であり、この果てない海の向こうに極楽浄土があると信じられていました。

 

昔の旅人たちも、この道を歩きながら、海の向こうの別世界に想いを馳せたのかもしれませんね。

海を見ながらのんびりできるカフェ、HaneCafe

松本峠や鬼ヶ城、そして海辺の熊野古道も歩いて、少し喉が渇いてきました。

そんな時、休憩スポットとしておすすめなのが、海を見ながらのんびりできるカフェ「HaneCafe(ハネカフェ)」。

 

七里御浜の海の目の前に立っており、店内はもちろんオープンテラスでも軽食やランチ、スイーツ、飲み物など豊富なメニューを楽しめます。

 

オススメは、熊野でとれたみかんのジュースと、クリームがたっぷり乗ったふわふわのパンケーキ!

パンケーキには「あそぼらん」という地元産の平飼い有精卵が使われています。

ひとくち食べると、とっても軽い食感!たまごの旨みとコクが感じられて、何枚でもパクパク食べられるお味です。

 

たくさん歩いて小腹が空いた時には、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

熊野のおいしい魅力を、たっぷり味わうことができますよ。

詳細情報

名称 HaneCafe(ハネカフェ)
住所 熊野市有馬町124-17-18
電話番号 090-2625-8859
公式URL https://localplace.jp/t200598305/index.html
公式Instagram https://www.instagram.com/hanecafe_kumano
営業時間

〔月〜木〕11:00~17:00

〔土日祝〕10:00~17:00

定休日 金曜日
駐車場 あり 7台
公共交通機関でのアクセス JR紀勢本線「熊野市駅」から徒歩15分
車でのアクセス 熊野尾鷲道路「熊野大泊IC」から国道42号経由南へ約5分

川の熊野古道・熊野川の舟下り

さて、おいしい地元食材を使ったスイーツでお腹が満たされたら、いよいよゴールは目前。 海岸の道を進むと見えてくるのは、熊野川です。

かつて、熊野三山を詣でた貴族は、熊野本宮大社から熊野川を舟で下って熊野速玉大社を目指しました。

そのため熊野川は、熊野三山を結ぶ道でもあり、世界遺産にも登録されています。

現代でも、下流の紀宝町北檜杖から、熊野速玉大社のすぐ近くの権現川原までを、舟で下ることができます。

舟には、三反帆(さんだんぼ)という帆が備えられていて、風の力を借りて船が進む仕組みになっています。

川の上をなめらかに滑っていく舟。風を浴びながらの水上の旅はとても心地の良いものです。

これまでとても長い距離を歩いて旅をしてきた人にとって、この川舟に乗っているひとときは、ほっと一息つける時間だったことでしょう。

詳細情報

名称 熊野川体感塾
住所 南牟婁郡紀宝町 北檜杖203
電話番号 0735-21-0314
公式URL https://www.za.ztv.ne.jp/w58yd3jb/
営業時間 9:00~17:00
駐車場 あり(無料)
公共交通機関でのアクセス JR紀勢本線「新宮駅」より車で15分
車でのアクセス(熊野方面から) 熊野尾鷲道路「熊野大泊IC」から国道42号経由で南へ約40分

いよいよ旅の終着点。熊野速玉大社へ

舟を降りたら、ゴールの熊野速玉大社はいよいよもうすぐそこです。

参道を進んでいくと、目の前に大きな赤い鳥居が現れました。

ここが、今回の旅のゴールである、熊野速玉大社

熊野本宮大社、熊野那智大社と並ぶ熊野三山の一社であり、熊野速玉大神・熊野夫須美大神の御夫婦の神様を中心にお祀りしている神社です。朱塗りの社殿が美しい、御鎮座1900年近くの古社です。

古くから多くの人々が訪れてきた熊野三山は「蘇りの聖地」とも呼ばれます。

 

紀伊山地の深い山々、そして、広く青い熊野灘。

熊野古道伊勢路の自然は、感動を与えてくれる美しさと、同時にその厳しさも教えてくれます。

そんな自然の中を歩くことで、人々の心からは余計なものが削ぎ落とされ、どんどんシンプルな自分自身と向き合えるようになっていくのかもしれません。

そして最後にたどり着く聖地で、神様の前で手を合わせた瞬間には、身も心も軽くなって、本当に生まれ変わったかのような気持ちにさせてくれます。

詳細情報

名称 熊野速玉大社
住所 和歌山県新宮市 新宮1
電話番号 0735-22-2533
公式URL http://kumanohayatama.jp/
営業時間 日の出~日没(授与所は8~17時)
駐車場 あり(無料)
公共交通機関でのアクセス JR紀勢本線「新宮駅」より徒歩15分
車でのアクセス(熊野方面から) 熊野尾鷲道路「熊野大泊IC」から国道42号経由で南へ約40分

いかがだったでしょうか?

今回は、熊野古道伊勢路を歩きながら、現代の巡礼の旅ってどんなものだろう?歩くことで、どんな変化があるのだろう?という疑問を解き明かしてきました。

 

前編の旅では、伊勢神宮をスタートし、歩いて、食べて、祈って、眠って。

美しい景色との出会い、美味しい食べ物との出会い、人のあたたかさとの出会いを通じて、新しい自分に出会いました。

 

後編の旅では、紀伊半島の深い山々を越えた先、熊野の地の開放的な海の風景に包まれて。

深淵で神秘的な自然の造形美や、そこから生まれた人々の信仰や歴史の営みに触れ、蘇ったかのような気持ちになりました。

現代の巡礼は、自然や人を通じて自分自身と向き合い、新しい自分に生まれ変わる、そんな貴重な時間なのかもしれません。

 

あなたも、生まれ変わった自分に会いに、熊野古道伊勢路を訪れてみてはいかがでしょうか。

 

後編で巡ったスポットをまとめたマップはこちら↓

山下さんのYouTubeチャンネル「オトナ女子の山登り」この記事と連動した動画はこちら

【熊野古道②】歴史を感じる松本峠、世界遺産を巡りながら熊野速玉大社へ【世界遺産】Day2

 

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