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サイクリングで名張・曽爾エリアへ。紅葉・ススキ・温泉を満喫する欲張りコース【美し国三重 自転車道中記その12】

掲載日:2021.01.27

三重県西部、奈良県境にある名張市は、香落渓(かおちだに)や赤目四十八滝など、紅葉の名所としても知られる景勝があります。さらに駅前の市街地から少し足を延ばすだけで、自転車でも走りやすい環境になるのも魅力。日帰り入浴が楽しめる温泉宿もあり、旅の締めもバッチリです!
そこで今回は、名張の景勝と紅葉の名所を巡り、奈良と三重の県境付近にあるススキの名所・曽爾高原(そにこうげん)も訪ねる上り多めの走りごたえ満点のコースを紹介します!

■旅人 自転車ライター・浅野真則
自転車歴およそ20年。三度の飯+おやつと同じぐらい自転車が好き。自転車を愛するあまり、フリーの自転車ライターに転身。仕事と称して自転車に乗り、プライベートでもレースやロングライドを楽しむ。
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「美し国・三重 自転車道中記」とは?三重県生まれ三重県育ちの自転車ライター・浅野真則が、三重県の魅力を自転車で巡りながら紹介します!
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ダムを渡って湖畔を走り、紅葉の名所・香落渓へ

青蓮寺(しょうれんじ)ダム

今回のサイクリングの舞台は、三重県西部にある名張。津から近鉄特急で30分ほど、名古屋や大阪からのアクセスも良好です。というわけで、今回のスタート地点、近鉄名張駅に降り立ちました!(車の場合は駅周辺の有料駐車場を利用してください)。

まずは青蓮寺湖を目指します。駅東口のロータリーを南進し、平尾交差点を左折。国道165号を渡るといきなり上りが始まりますが、ウォーミングアップがてら軽いギヤに変速してそのまま道なりに進みましょう。突き当たりの4叉路を右折して東進すると、目の前に青蓮寺湖と青蓮寺ダムが見えてきます。

青蓮寺ダムは名張や阪神地区の水瓶として機能するアーチ式のコンクリートダム。堤の高さは82mで、奈良の大仏の5.5倍もあるそうです!

しかも、ダムの堤の上を渡ることできます。堤の上は道幅が狭く、時折車も通るので、気をつけて渡りましょう。

青蓮寺湖

しばらく青蓮寺湖畔を走ります。青蓮寺湖には赤と青の鉄橋が架かっていて、なかなか絵になります。

赤い鉄橋は弁天橋というそうです。今回はこの橋を渡って県道81号(名張曽爾線)を通り、曽爾方面を目指します。

ちなみに、青い鉄橋は青蓮寺橋というそうです。名前と色がつながっていて覚えやすいですね! 青蓮寺橋は今回は渡りませんが、右手に見ながら近くを通過します。

香落渓

青蓮寺橋を右手に見ながら県道81号を南下すると、香落渓トンネルが現れます。トンネルを抜けると視界がパッと開けていよいよ香落渓に入ります。

香落渓は、1500万年前の火山活動によって堆積した安山岩が浸食されたことによってできた渓谷で、青蓮寺川の両岸に柱状節理の岩肌がおよそ8kmに渡ってそびえ立っています。羅漢岩や屏風岩やといった奇岩もあり、渓谷全体が紅葉の名所として知られます。

今回のトップ画像は香落渓の亀瀬と呼ばれる付近で撮影したものですが、この少し先の鬼面岩・武者岩付近やもみじ谷も紅葉が映える絶景スポットです。

もみじ谷を過ぎると、目の前にそびえ立つ柱状節理の岩肌が現れます。紅葉の時期も見事ですし、新緑の時期もきれいですが、冬場は岩肌のごつごつした感じが強調されて、これはこれで迫力があって見事です。まるで衣替えをするように、香落渓は四季折々の風景を楽しませてくれます。だからいつ来ても「また来たい」と思えるのです。

さらに青蓮寺側を遡るように南に進むと、三重と奈良の県境が現れます。県境であることを示すのは路傍の標識ぐらいですが、自転車で県境を越えることは分にとっては日常的なことではないので、「旅をしているんだなぁ」という実感が得られます。

県道の番号は三重・奈良で共通ですが、県境で曽爾方面に向かう距離標の表示が0になっていました。ここから先は奈良県です。



ススキの名所・曽爾高原へヒルクライム

新宅分店・サイクルステーション

県道をさらに南に進むと、伊賀見の集落が現れます。曽爾高原の上り口はこの集落の中、県境から4kmほど走ったところです。

上り口の直前、右手にガソリンスタンドに隣接するサイクルステーションという施設が現れます。看板には自転車の絵が描かれていて、サイクルラックや空気入れ、工具などもあるようです。サイクリスト歓迎のようですし、カフェスペースもあるので立ち寄っていきましょう。

サイクルステーションは、大正時代にこの地でよろず屋を創業した新宅分店が、曽爾高原を訪れるサイクリストをもてなすために始めたもの。よろず屋の店内の一角にカウンター席が設けられています。カフェの隣にはパンやピザなどを作る工房TAZUがあり、奥様の多寿さんが20年以上月替わりのパンを作っていて、地元のお客様にも人気だそうです。

「もともとはバスを待つハイカーをもてなすためにカフェを始めたんやけど、自転車乗りの方も多くいらっしゃるので自転車の方にも来てもらいやすいように工具や空気入れも用意したんですわ」と3代目の新宅孝志さん。

カフェでは奥様の多寿さんが心を込めて作る手作りパンや、地元産のトマトなどの野菜を使った手作りピザ(500円)も味わえます。ピザは注文を受けてから作るので焼き上がりに20分ほどかかるため今回は断念しましたが、事前に到着時刻を知らせて予約しておくと待たずに食べられるそうですよ!

というわけで今回は、ツリーのフルーツケーキ(160円)とミルクティマカロンブレッド(120円)、コーヒー(200円)をいただきます。地元でも人気の手作りパンは、素朴な味わいでとてもおいしかったです! パンは月替わりなので、また別の月に違うパンを食べるという楽しみが増えました。今度は予約して行ってピザもいただきたいです!

新宅分店サイクルステーション
住所:奈良県宇陀郡曽爾村伊賀見8
営業時間:7時~19時(日曜・祝日は8時~18時)
定休日:不定休
TEL:0745-94-2046

曽爾高原

カフェで一休みしてエネルギー補給もバッチリできたので、このコース最初の山場・曽爾高原のヒルクライムに挑みましょう!

サイクルステーションを出てすぐに左折し、橋を渡ると程なく曽爾高原への上りが始まります。曽爾高原への上りは、距離が4kmほど、獲得標高は330mほどあり、平均勾配は7.8%と結構きついです。しかも、勾配のきつい区間が後半に集中していて、終盤は10%を越えるようなかなりきつい勾配もあります。スピードは気にしないで早めに軽いギヤに入れつつ、時には立ちこぎも入れながらチャレンジしてください! ここで足を着かずに上れたらたいていの上りはクリアできるでしょう。

上りきったところに国立曽爾青少年の家があり、この近くから曽爾高原のススキ原を一望できます。ススキ原の中には遊歩道もありますが、ロードバイク用のビンディングシューズでは歩きにくいので歩きやすい靴を持参した方が良さそうです。

写真は曽爾高原のススキ原です。ススキは毎年9月中旬から11月下旬ごろまでが見ごろとのことです。

ススキを堪能したら、曽爾高原牧場方面にも脚を延ばしてみましょう。タイミングがよければ牛が放牧されるのどかな風景を楽しめます。

あとは曽爾の中心街までご褒美の下りです。道幅も広く、見通しもよいうえ、ペダルをこがなくてもスピードが上がるので爽快ですが、スピードの出し過ぎには注意しましょう!


渓谷を抜け、赤目の滝を巡り、シメは温泉!

長走りの滝

曽爾高原牧場から曽爾村役場方面に下りていくと、先ほど走っていた県道81号に出ます。右折し、すぐに左折して青蓮寺川を渡り、左手に曽爾村役場を見ながら丁字路を右折します。500mほど進んで左折すると、県道784号、赤目掛線に入ります。ここから本日2回目のヒルクライムです。

赤目掛線のヒルクライムは、上り口からピークまで距離4kmほど、獲得標高は330mほどで、平均勾配は8.2%と曽爾高原よりさらにきついです。特に中盤のつづら折りから長走りの滝付近までが勾配がきついので、やはり早めに軽いギヤに入れて立ちこぎも交えながらやり過ごしましょう。

長走りの滝の近くの上りでは、先ほど上ってきた曽爾高原を一望できますよ!

これが長走りの滝です。このあたりで射られた大蛇が怒って麓の方に逃げていった跡だといわれているそうです。近くまで行く道はなさそうなので、県道から眺めることにします。取材時は水量が少なかったですが、水量がある時はかなりの迫力でしょう。

長走りの滝周辺は、秋には紅葉も楽しめます。周辺の山が紅葉の錦をまとい、まさに“山装う”という表現がしっくりくる絶景が楽しめます。

紅葉と滝を楽しんだら、上りは残り半分ほど。この先は勾配も比較的に緩やかになりますが、軽めのギヤを回すようにのんびりと行きましょう。

下りは道幅も狭く、見通しが悪いだけでなく、路面が荒れているところもあるので、慎重に走ってくださいね。

赤目四十八滝・日本サンショウウオセンター

県道784号をグングン下っていくと、右手に日帰り入浴可能な温泉宿・赤目山水園が見えてきます。本日のシメの温泉はここですが、その前に赤目四十八滝を訪れましょう。

赤目四十八滝の入り口へは県道784号から県道567号に乗り換え、3kmほど滝川を遡るように進むと到着します。滝の入り口には日本サンショウウオセンターがあり、ここで入館料・入山料(大人500円、小中学生250円)を支払うと日本サンショウウオセンターと赤目四十八を見学できるシステムです。この先はかなりしっかり歩くので、サイクルラックに自転車を停め、歩きやすい靴に履き替えて行きましょう。

日本サンショウウオセンターでは、特別天然記念物のオオサンショウウオをはじめ、国内産を中心としたサンショウウオが9種類、合わせて約50匹が展示されています。赤目はオオサンショウウオの生息地として知られ、同館で飼育されているオオサンショウウオは赤目生まれだそうです。オオサンショウウオは自然豊で水がきれいな場所でないと成育できないそうですから、赤目の自然の豊かさを物語っていますね。

日本サンショウウオセンターを抜けると、赤目四十八滝のハイキングコースが始まります。ハイキングコースとはいえ、結構本格的に歩くので、心してかかりましょう。

赤目という地名は、役の小角(えんのおづの)が滝行中に不動明王が赤い目の牛に乗って現れたという伝説にちなむそうです。四十八滝とは滝の数が多いことを表していて、仏様の名にちなんだ滝がたくさんあります。これは赤目の自然景観を曼荼羅図に見立てたもので、滝をすべて巡ることで願いが成就するとも考えられています。

また、このあたりで伊賀忍者の祖・百地三太夫やその弟子たちも修行したと伝えられているそうです。つまり、赤目四十八滝は、霊地であり、修行の場であり、信仰の対象でもあったのです。

今では紅葉の名所としても知られ、冬には滝が結氷する氷瀑(ひょうばく)が見られることもあるそうです。新緑の季節が美しいのも言わずもがな。四季を通じて豊かな自然が楽しめます。

青蓮寺

滝の散策を満喫したら、最後に青蓮寺湖や青蓮寺ダムの名前の由来になった古刹(こさつ)・青蓮寺を訪ねましょう。

青蓮寺は真言宗醍醐派の寺院。伝承によると、1200年ほど前に真言宗の開祖・空海(弘法大師)がこの地に布教に来て、その後地域住民の手によって創建されたとのことです。室町時代には青蓮寺城が築かれたそうですが、今は寺の裏手に土塁が残るのみです。

寺は蓮の名所としても知られ、8月ごろには境内に蓮の花が咲き乱れます。15年ほど前に住職が植え始め、今では50種約180鉢が植えられているとのこと。中には70年ほど前に千葉県で見つかった弥生時代の蓮・大賀蓮もあるそうです。夏の蓮の時期にまたうかがいたいです!

赤目温泉山水園

今回のシメの温泉は、曽爾方面から2回目のヒルクライムを追えて下ってきたところにあった赤目温泉山水園です。滝川支流の渓流沿いにある、自然に囲まれた静かな温泉宿です。

宿泊はもちろん、日帰り入浴もできます!

浴場は吉祥の湯と甘露の湯の2種類あり、それぞれ内風呂と露天風呂が楽しめます。写真は吉祥の湯の内風呂です。1日ごとに男女入れ替え制になっています。

泉質は単純弱放射能鉱泉で、近畿随一の天然ラドン含有率を誇るそうです。“肌に優しい美人と健康の湯”として女性の人気も高いそうですが、筋肉痛の緩和や疲労回復の効能もうたわれてるので、サイクリング後のシメの温泉としてピッタリです!

このコースを堪能するなら、山水園に泊まって1泊2日の日程を組むのもおすすめです。山水園では平日限定の宿泊プランだけでなく、一人旅向けのプランやグループにピッタリのプラン、記念日のためのプレミアムプランなど、さまざまな宿泊プランが用意されています。夕食は伊賀牛のすき焼きや季節の食材を楽しめる会席料理のどちらかが選べます。客室は全室離れなので、ゆったりと羽を伸ばしつつ、のんびりと過ごせます。

サイクリングを楽しみ、温泉とおいしい料理で英気を養えるなんて、なんてぜいたくなんでしょう! 冬の間は標高の高いところは路面凍結の恐れがあるので、温かくなったらぜひ走りに行ってみてくださいね!

赤目山水園
宿泊:平日湯ったりお得プラン!1泊2食大人1人1万3000円~(4人1室の場合)
※他にもさまざまな宿泊プランあり
温泉のみ:大人800円、小人500円
※同館のお食事処で1500円(税別)以上の料理を注文すると入湯料300円割引
時間:平日10:00~21:00、休前日・特定日10:00~15:00
TEL:0595-63-1034 ※予約や問い合わせは0120-375-526
WEB:http://www.akame-sansuien.jp/
★今回のコースはこちら

記事作成/浅野 真則

※この記事の写真撮影は、基本的に12月に行っていますが、紅葉とススキに関しては11月に別撮りを行ったものを使用しています。
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