【美し国・三重 自転車道中記:いなべ編】TOJの舞台も含む起伏に富んだコースでグルメと観光を満喫!
掲載日:2019.04.04
三重県最北端のいなべ市は、西に鈴鹿山脈と北に養老山地を望む自然豊かなところ。自転車ロードレースのツアー・オブ・ジャパンいなべステージの舞台でもあり、町を挙げてサイクリストをもてなそうという機運があるサイクリストに優しい町です。
今回はいなべ市をぐるっと一周する通称・いなイチのコースをたどり、いなべの見どころやおいしいものをサイクリングしながら堪能します!
三重県生まれ三重県育ちの自転車ライター・浅野真則が、三重県の魅力を自転車で巡りながら紹介します!
■旅人 自転車ライター・浅野真則
自転車歴およそ20年。三度の飯+おやつと同じぐらい自転車が好き。自転車を愛するあまり、フリーの自転車ライターに転身。仕事と称して自転車に乗り、プライベートでもレースやロングライドを楽しむ。
■旅の道連れ・村上(三重県観光連盟)
自転車を始めて半年のロードバイク初心者。仕事柄、三重県の観光スポットやグルメに詳しく、おいしいものには目がない。
自転車ロードレースのツアー・オブ・ジャパンいなべステージの舞台でもあり、町を挙げてサイクリストをもてなそうという機運があるサイクリストに優しい町です。
今回はいなべ市をぐるっと一周する通称・いなイチのコースをたどり、いなべの見どころやおいしいものをサイクリングしながら堪能します!
コース:いなべ市内
走行距離:55.2km
難易度:★★★★★
◆ふれあいの駅うりぼう
サイクリストにとって、いなべはちょっと特別な場所です。
毎年5月に開催される国内最高峰の自転車ロードレース、ツアー・オブ・ジャパンのいなべステージの舞台であり、ホビーレースやロングライドイベントも年に何回か開催されているからです。
さらに全国的にもまだまだ珍しい、自転車をそのまま車両に乗せて旅することができる三岐鉄道三岐線のサイクルトレインも走っていて、豊かな自然あり、サイクリスト歓迎のグルメスポットありと、サイクリングの舞台としても魅力的です。
今回はいなべの魅力を詰め込んだいなべ一周サイクリングコース、通称「いなイチ」に挑戦します! このコース、サイクリストでもある同市の職員たちが考えたそうですよ!久しぶりに本連載担当の自転車ビギナー・村上さんも一緒に走りますが、上り多めの今回のコース、果たして完走できるのでしょうか?
いなイチのスタートとゴールは、ふれあいの駅うりぼうです。
ここは三岐鉄道北勢線大泉駅に隣接するいなべ市の農産物の直売所で、地元で採れた新鮮な野菜や手作りのお菓子やお総菜、ジェラートも販売されています!
大きな駐車場もあるので、マイカーで来ても大丈夫です。
カウンターの中に並ぶ10種類以上のジェラートの中から、好みのものをカップまたはコーンに盛り付けてもらえます。シングルだけでなく、ダブルも選べます。
道の駅うりぼうの代表・日紫喜 淳さんにオススメをうかがいました。
「一番人気は焼き芋で、地元産のサツマイモを使っていますよ。その他の味も市内を中心にこのあたりで採れたものを材料に使っていますが、ほうじ茶は町内の石榑(いしぐれ)茶、いちごもいなべ産のものを使っていてオススメです!ちなみにミルクは大内山牛乳です」
なんとほぼ三重県産! まさに地産地消を地で行くジェラートです。
今回はオススメの中から村上さんは焼き芋、僕はほうじ茶といちごのダブルをいただくことにしました。
「焼き芋、優しい甘さでおいしい!」
「ほうじ茶はお茶の香り高くてさっぱりしてていい!いちごも鉄板のおいしさだよ!」
一口一口、じっくり味わいながらいただきました!われわれが頼んだほかにも、トマトとか黒米とかいろいろ変わった味がありました。複数人でダブルを購入していろいろな味を分け合いながら楽しむのがオススメです!
スタート前にジェラートでエネルギーを補給できたので、パワーがみなぎってきました!いよいよバイクにまたがって「いなイチ」スタートです!
今回は事前にGPSサイクルコンピューター(GPS機能付きの自転車用のメーター)にいなべ市サイクルツーリズム実行委員会提供のルートデータを入れてナビゲーションを利用できるようにしてきたので、初めて通るところもありますがコースは大丈夫なはず!
うりぼうをスタートしたら国道421号との交差点を左折。そのまましばらく国道を進みます。
この区間は交通量も多めで大型車も通り、路肩も少々狭いので注意して走りましょう。大泉新田交差点で右折したら、またすぐに左折。ルートは土地勘のない人だとまず通らなそうなところですが、今回はナビもあるので安心です。
それにしても地元のサイクリストが作ったコースだけあって、国道を抜けてからはかなり走りやすかったです。しかも、短めの上りとそれよりさらに短い下りが現れるジェットコースターのようなコースで走っていて楽しい!
このコースを作った人は、間違いなく自転車が大好きなはずです(笑)。
……なんて気持ちよく県道610号を走っていると、本日最初の目的地、カエル様に到着しました。お腹のところに「無事」という文字が彫られたカエルの石像で、なでると無事に帰れるのだとか。僕も安全に走れるようにと念じながらなでなでしました♪
◆TOJの山岳賞ポイント
カエル様から先も断続的に上りが現れます。
一つひとつの上りが特に長いわけではないのですが、気付くと結構上らされています。
自転車ビギナーの村上さんには、「スピードを出さなくてもいいので、軽いギヤを回してのんびり上りましょう」とアドバイス。
このコースは、上りのほとんどが前半に集中していて、後半はほぼ下り基調なので、前半さえクリアしてしまえばあとは何とかなるのです。とはいえ、前半でバテないように、序盤はあえてペースを押さえるなど、ペース配分は重要です。
そうこうするうちに左手に勝泉寺が見えてきました。ここはしだれ桜の名所だそうで、樹齢はなんと340年。毎年4月上旬ごろには見事なしだれ桜を楽しめます!この先が上りが続くので、ここで花見がてら一服するのもオススメです!
このコース一番の難所は、TOJ山岳賞ポイントに向けての上り。この上りの途中でTOJのコースに合流します。レースではここは下り区間で、梅林公園側から上ってきてものすごいスピードで下っていきますが、レースコースを逆走するように上ってみると、結構な勾配です。
「もうすぐ山岳賞ポイントですよ! あとちょっと頑張りましょう!」
「自転車乗りの“すぐ”と“ちょっと”は信用できません!」
・・なんて言っているうちに山岳賞ポイントに着きました!
せっかくなので記念撮影していきましょう。
ここから梅林公園に向けて下っていきます。山岳賞ポイントからちょっと下ったところには、中里ダムや鈴鹿山脈を臨む絶景ポイントもあります。
「わあ!いい景色!」
頑張って上った人には、ちゃんとご褒美があるのがこのコースのいいところです。
山岳賞ポイントからちょっと下ったところに三叉路があります。
ここを梅林公園方面に下っていく坂は、通称「いなベルグ」と呼ばれるTOJいなべステージ屈指の難所です。いなベルグという名前は、自転車レースの本場・ベルギーで行われる伝統あるクラシックレースの石畳の激坂・コッペンベルグにちなむのだとか。
いなベルグの最大勾配はなんと17%!道幅も狭く、過酷さでは本家に負けません!まさにクラシックレースの難所を思わせるポイントで、TOJいなべステージでもレースの勝負どころのひとつです。
僕もいなべステージに自転車で観戦に来るとレース後に必ずここを走るのですが、そこそこトレーニングを積んでいる僕でさえ、一番軽いギヤにしても上るのが大変です!きついとわかっていても上りたくなってしまうのは、坂好きサイクリストの性でしょうか。オプションコースとして紹介しますので、興味のある方はぜひチャレンジしてください!さらに5月のTOJでこの区間を駆け抜けるプロ選手の走りを見ると、感動もひとしおですよ!
いなべ市農業公園は、3月上旬から下旬にかけて梅まつりが開かれる梅林公園でおなじみのお花見スポットで、38万平方メートルの広大な敷地に、100種類、4000本の梅が植えられている東海地方最大級の梅園です。
梅のイメージが強い「いなべ市農業公園」ですが、実は「ぼたん」の名所でもああり、4月下旬から5月上旬にかけて、約5000本のぼたんの花を楽しむことができますよ!
◆草餅えぼし
梅林公園を後にし、再びいなイチのルートに戻ります。
ここから国道365号までは緩やかな上り。このコース最大の難所である山岳賞への上りと、オプションのいなベルグを経験してしまえば、それほどきつく感じないのが不思議です。国道365号に出たら左折。
1.5kmほど道なりに進むと、左手に「草餅えぼし」の看板が見えてきました。
「あっ、ここです! 小腹も空いたし、ちょっと立ち寄りましょう!」村上さんのグルメセンサーが作動したようです。
店先にサイクルラックがあります。自転車で訪れる人を歓迎してくれるようでうれしいです!
カウンターには看板商品の草餅のほか、道明寺タイプの桜餅、黒豆大福、しそまんじゅうなど、季節の地元食材を使ったおいしそうな手作り和菓子が並んでいます。
われわれは草餅をそれぞれ1つずつ注文しました。
「草餅は地元のお米やヨモギを使っているんですよ。あちらで一服していってください」とご主人に案内されたのは、店内の一角にある囲炉裏前の休憩スペース。
冬の間は囲炉裏に火が入っているそうです。
手に取ると餅がふんわり軟らかくて、作りたてであることが分かります。
一口食べると口の中にヨモギの香りがふわっと広がります。素朴だけど優しい味。甘さも控えめでいくつでもいただけそうです。ごちそうさまでした!
基本情報
草餅 えぼし
住所:いなべ市藤原町古田1152‐1
電話番号:0594‐46‐2448
営業時間:9:00~17:00
定休日:水曜日
草餅えぼしを出発し、国道365号を再び南へ。5kmほど進むと、右手におしゃれな雰囲気のログハウスが見えてきました。ここでまたしても村上さんのグルメセンサーが作動しました。
「ここです、カフェアタント!地元の方のおすすめのお店です!」
「あ、ここにもサイクルラックがある!」おしゃれなお店って、サイクルジャージで入るには少し気後れするものですが、サイクルラックがあるとサイクリスト歓迎という免罪符をもらったようでサイクリストとしてはありがたいのです!
木のぬくもりに満ちた優しい雰囲気の店内には薪ストーブもしつらえられていて、ちゃんと暖房器具として使われています!店員さんに席に案内してもらい、おすすめの料理をうかがって注文しました。
ベーコンは厚切りでボリューム満点!レタスもしゃきしゃきしていて美味でした!さらに、はっさくの果肉が入ったはっさくティー(500円)、やきたてパン(320円)などなど、どれもこれも本当におすすめ!
とくにはっさくティーはさっぱりした味わいとさわやかな香りが相まって、とてもサンドイッチやパンに合いました!
フレンチトースト・プレーン(480円)と卵たっぷりプリン(250円)です。
「どちらも卵のコクがすごい!」
「フレンチトースト、ふわふわの食感がたまらない!」
感動もののおいしさでした。たっぷり走ってきておなかをすかせていたわれわれは、ボリューム満点の料理をぺろりと平らげてしまいました。
お店の方の話だと、フレンチトーストとプリンに使われている卵は、「こめ米たまご」という国産米を食べて育った鶏の卵を使っていて、卵の臭みはないのにコクが深いのが特徴なんだそうです。どうりで卵のコクが半端ではなかったわけです!
料理もデザートもおいしくてお腹も大満足のわれわれ一行。居心地がよくてここでゆっくりしたくなりますが、日が暮れる前に帰らなくてはいけないので、後ろ髪引かれる思いでお店を後にしました。
基本情報
cafe Attente(カフェアタント)
住所:いなべ市藤原町山口1950‐3
電話番号:0594‐46‐4800
営業時間:9:00~17:30
定休日:第1火曜・水曜
お腹もいっぱいになったところで、今度はいなべの別の魅力を紹介すべく、「いなイチ」の本来のコースからは外れますが、三岐鉄道三岐線の西藤原駅に向かいます。
いなべは鉄道マニアに言わせるとなかなか興味深いエリアなんだそうです。三岐鉄道三岐線は、自転車をそのまま列車内に持ち込めるサイクルトレインが運行されています。これは全国的にはまだまだ珍しいサービスです。
通常、自転車を列車内に持ち込むには、フレームとホイールを分解して輪行袋という専用の袋に収納する必要があります。自転車を専用の袋に入れて公共交通機関で旅することを輪行と言いますが、輪行では旅先でサイクリングを始める前に、自転車を組み立てる必要もあります。
しかしサイクルトレインを利用すればその必要がないので、気楽にサイクリング中に電車を利用できるのです!この先、コースは下り基調とはいえ、体力に自信がなければ三里駅までショートカットすれば、残り5kmほどの地点まで“ワープ”できますよ!
もうひとつ、いなべの鉄道に関する見どころを紹介しましょう。
三岐鉄道北勢線のめがね橋とねじり橋です。三岐鉄道北勢線は、一般向けに営業している路線としてはかなり珍しい線路幅が762mmの「ナローゲージ」という規格を採用しています。
JR在来線が採用する狭軌よりさらに線路幅が狭いため、列車も幅がかなり狭く、その姿から鉄道ファンには“マッチ箱”の愛称で親しまれているそうです。
そんなかわいらしい列車を見るのに最高のポイントがめがね橋とねじり橋なのです。
西藤原駅からいなイチのルートに戻り、国道306号を経て国道421号へ。このあたりは交通量もちょっと多めなので気をつけて走りましょう。三笠橋を渡ってすぐの信号交差点を右折。すると左手にめがね橋が見えてきます。さらに眼鏡橋の少し東にはねじり橋があります。
どちらもアーチ型のコンクリート橋ですが、めがね橋はアーチが3つ、ねじり橋はアーチがひとつです。われわれ一行が通りかかったとき、ちょうど“マッチ箱”と呼ばれるかわいらしい列車が通っていきました!
ねじり橋で急いでカメラを構え、写真を撮ることができました!ここまで来たらゴールのうりぼうも近くです。
ふるさとの駅うりぼうについたらサイクリングは終わりですが、今回はとっておきのシメのプランをご用意しました!車に自転車を積み込み、車で三岐鉄道北勢線の阿下喜駅方面に向かいます。
阿下喜駅前に阿下喜温泉という入浴施設があるので、ここでひとっ風呂浴びるのが今回のシメです♪
汗を流してさっぱりし、疲れを癒やしてから帰途につけるなんて、いいコースですね。
三重県にはこれまでに紹介したコース以外にも、まだまだ魅力的なコースがあります。もしかしたら僕がまだ走ったことがない魅力的なコースがあるかもしれません。これからも自転車で三重県の魅力を訪ね、味わい、体感し、楽しめるようなコースをどんどん紹介していきたいと思います!
【今回のルート】
記事作成/浅野真則
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