お茶どころ三重。EXILE橘ケンチさんが伊勢茶の魅力を知り、四日市市水沢町のかぶせ茶を味わう

辺り一帯にお茶畑が広がる四日市市水沢町を訪れた橘ケンチさん。三重県のお茶生産量は、鹿児島県、静岡県に次いで全国3位であり、なかでも三重県のかぶせ茶の生産量は全国1位を誇ります。今回は、「四日市市茶業振興センター」にて伊勢茶について学び、「かぶせ茶カフェ」でかぶせ茶を飲み比べ。伊勢茶やかぶせ茶の魅力をとことん深掘していきます。

橘ケンチさんプロフィール

伊勢茶

EXILE及びEXILE THE SECONDのパフォーマー。2007年二代目J Soul Brothersのメンバーに抜擢、2009年3月1日EXILEにパフォーマーとして加入して以降、所属するLDH JAPANの掲げる「日本を元気に」をテーマに活動。現在は2025年11月15日(土)に始まるドームツアー『EXILE LIVE TOUR 2025 “THE REASON”』の開催が控えている他、先ごろLDH JAPANから6年に一度の〈祭り〉である『LDH PERFECT YEAR 2026』の開催も発表。俳優業に加えて過去には語学力を活かした番組にレギュラー出演するなど多方面で活躍。また、ライフワークとして日本酒の魅力を発信、食のフィールドや地域共生及び社会貢献に対する知見も深めている。2023年SAKEの魅力を網羅した書籍『橘ケンチの日本酒最強バイブル』(宝島社)及び処女小説『パーマネント・ブルー』(文芸春秋)を上梓。2018年13代酒サムライ、2021年福井市食のPR大使、2023年LDH JAPANのSocial Innovation Officerに就任。

【EXILE mobile】https://m.ex-m.jp

伊勢茶について学ぶ

 

伊勢茶

 

まずは水沢町にある四日市市茶業振興センターにて、日本茶インストラクターの松ケ谷祐二さんのお話を伺いながら、伊勢茶について学んでいきます。

 

松ケ谷さんは長く日本茶の研究に携わり、現在、日本茶の普及活動を行うNPO法人「日本cha茶ちゃ」の副理事を務めていらっしゃいます。日本cha茶ちゃの活動の一環として、手作り茶のワークショップ、お茶の淹れ方セミナー、食育(幼稚園・小学校向け)なども行っており、様々な場で日本茶や伊勢茶の魅力を発信されています。

 

名称 NPO法人 日本cha茶ちゃ
住所 三重県松阪市飯南町粥見627番地2
メールアドレス nippon.cha.cha.cha.npo@gmail.com
公式URL https://www.npo-nipponchachacha.com/

伊勢茶とは

 

伊勢茶

 

伊勢茶とは、三重県を産地とするお茶の総称です。

 

 松ケ谷さん 「伊勢茶には主に3種類のお茶があります。ここ水沢町を含む北勢地域で主に作られるかぶせ茶、南勢地域で主に作られる深蒸し煎茶、そして江戸時代から庶民にも広く飲まれてきた煎茶の3種です。そして、これら3種より生産量は少ないですが、玉露や抹茶の原料となるてん茶なども三重県内で作られています」

 

伊勢茶と一口に言っても様々な種類(製法)があり、さらに地域ごとの特色もあるため、それぞれの違いを味わう楽しみもありそうです。

 

水沢町のお茶づくり

 

伊勢茶

 

三重県のお茶の生産量は、鹿児島県、静岡県に次いで全国3位であり、なかでもかぶせ茶の生産量は全国1位を誇ります。四日市市水沢町は鈴鹿山麓の裾野にある町で、山から流れる清水や肥沃な大地、朝夕の寒暖差がある気候など、お茶づくりに適した自然環境が整っています。

 

また水沢町のお茶の歴史は古く、始まりはなんと延喜年間(901~922年)にまでさかのぼるといわれています。水沢町にある飯盛山浄林寺(現・一乗寺)の住職である玄庵が、空海から直伝された製茶法を伝承し、この地域に茶の樹を植えたのが始まりといわれているそう。こうして始まった水沢町のお茶づくりは、時代の栄枯盛衰を乗り越えながら、千年以上にわたり大切に守られてきました。

 

かぶせ茶の特徴

 

伊勢茶

 

かぶせ茶は収穫する前に2週間ほど、茶樹を「寒冷紗(かんれいしゃ)」という黒いネットで覆い、直射日光を遮って栽培します。直射日光による茶葉の変化を防ぐことで、渋み成分である「カテキン」を抑え、うま味・甘味成分「テアニン」が多く含まれる、玉露に近い味わいのまろやかなお茶となります。

 

 松ケ谷さん 「玉露の場合はネットで覆う日数が20日前後必要となります。一方、かぶせ茶はネットで覆う期間が玉露よりも短期間です。うま味・甘味のあるまろやかな味わいを持たせつつ、お茶を生産するまでの期間を凝縮させたのが、かぶせ茶の特徴ともいえますね」

 

ただ、ネットを被せる手間そのものは玉露と変わりません。畝(うね)1本1本に対して手作業で行っていかなければならず、風でネットが飛ばないように1mおきに茶樹に紐を結びつける作業も発生するそう。

 

 松ケ谷さん 「手間のかかる作業ではありますが、これこそが美味しさの秘訣でもあります」

 

様々な角度から品評する「お茶審査」体験

 

伊勢茶

 

ここからは「お茶審査」を体験していきます。

 

お茶審査とは、お茶の品質を見極める審査のこと。外観・水色・香気・滋味の4項目にわたって審査を行い、品評していきます。様々な方法でお茶を品評していくため、日常的に飲んでいるだけでは気づけないようなお茶の魅力の発見にも繋がりそうです。

 

実際にお茶審査は全国で行われており、松ケ谷さんも審査員の一人として各地の審査に参加されています。

 

審査のプロである松ケ谷さんレクチャーのもと、橘ケンチさんもお茶審査に挑戦。今回はお茶審査のなかでも、外観・香気・水色の3項目の審査を体験していきます。

 

外観審査

 

伊勢茶

左がかぶせ茶、中央が煎茶、右が深蒸し煎茶

 

最初に外観審査に挑戦。外観審査では、茶葉そのものの見た目などを品評していきます。

 

今回用意いただいた茶葉3種はいずれも伊勢茶で、かぶせ茶、煎茶、深蒸し煎茶と、製法が異なるものが並んでいます。

 

 松ケ谷さん 「茶葉をよく見ると、製法の違いがよくわかります。かぶせ茶は緑が濃く、煎茶は黄色っぽい。深蒸し煎茶は、蒸す時間が長いので茶葉の繊維が壊れ、他のものと比べて細かくなっています」

 

なお通常行われるお茶審査では、かぶせ茶はかぶせ茶同士というふうに、同じ製法のお茶同士で審査が行われます。今回は伊勢茶の中での製法ごとの違いを学ぶため、3種の製法を比べる形で、お茶を品評していきます。

 

伊勢茶

かぶせ茶の茶葉

 

外観審査を行う際は、手触りで感じられる重量感なども確かめるそう。

 

触ってみると、かぶせ茶は少し重みや厚みを感じるような手触りで、深蒸し煎茶はサラサラと粉のようです。

 

⾹気審査

 

伊勢茶

 

⾹気審査では3gの茶葉に沸騰したお湯を注ぎ、茶葉を網ですくって香りを品評します。

 

 橘ケンチさん 「かぶせ茶は玉露に近い香りがしますね。煎茶は香ばしさが感じられます」

 

 松ケ谷さん 「それぞれの特徴が、香りにもよく出ていますよね」

 

ここで、審査を行うにあたって「あえて」行うというポイントについて、松ケ谷さんにお聞きしました。

 

 松ケ谷さん 「かぶせ茶を淹れる際は通常ぬるめ(60度)のお湯で淹れるのですが、審査では『あえて』沸騰したお湯を使います。高温のお湯だと香りの特徴が出やすくなり、良い香りと良くない香りの両方を感じられるようになります。味わいにおいても、低温でお茶を淹れると甘味が強くなりますが、高温では渋みが強くなります」

 

お茶「審査」というだけに、高温のお湯でお茶を淹れるなど、厳しい条件でお茶の品評が行われるそう。全国で行われるお茶審査は、製茶技術の向上を一つの目的としているそうで、農家の方々が腕を磨き続ける大切な場となっています。

 

水色審査

 

伊勢茶

 

お茶のお湯の色を見る水色審査においても、熱湯を使い、通常お茶を淹れる時間よりも長い時間置くなど、厳しい条件下で品評していきます。

 

 松ケ谷さん 「通常お茶を飲む場合、淹れる時間は1~2分ですが、審査ではお茶の種類によって4分や5分、長いものでは6分間抽出してから審査します」

 

写真左側のかぶせ茶は緑色、中央の煎茶は黄色がかった緑色、右の深蒸し煎茶は細かい茶葉が溶け、濁った色合いに。それぞれの水色の違いが一目瞭然で、お茶の中でもここまで違うのかと、個性の出かたに驚きます。

 

3つのお茶審査を体験した橘ケンチさん。以前、ご自身の書籍『橘ケンチの日本酒最強バイブル』製作にあたり、なんと3日間で500銘柄超の日本酒をテイスティングした経験もあるとのこと。今回のお茶審査は日本酒のテイスティングにも通ずるものがあるようで「お茶それぞれの違いがよく分かって面白い。とても興味深い体験ができました」とお茶審査を楽しんで体験された様子でした。

 

製茶工場を見学

 

伊勢茶

 

続いて、四日市市茶業振興センター内にある製茶工場を見学していきます。

 

こちらの工場では、収穫した茶葉を「荒茶」(茶葉の蒸し・揉み・乾燥の工程を経た一次加工のお茶のこと。ここから形を整える工程などを経て完成品の「仕上げ茶」となり販売されます)まで加工することができるそう。

 

製茶の工程を知る

 

伊勢茶

 

工場内を、四日市市茶業振興センター長の山田葉子さんが案内してくださいました。

 

 山田さん 「茶葉は摘んだ瞬間から発酵が進んでいきます。そのため新鮮なうちに工場で蒸して熱処理を加えて発酵を止めます」

 

ちなみに茶葉をあえて発酵させると、ウーロン茶(半発酵)や紅茶(完全発酵)ができるそうです。

 

山田さんが手を触れている機械は「粗揉機(そじゅうき)」というもの。金属部分は触るとバネでしなります。

 

 山田さん 「この金属部分は『揉み手』と言って、人間の手を機械が再現してくれているものなんです」

 

伊勢茶

 

橘ケンチさんが触れているのは「葉打ち機」といって、粗揉機よりも前の段階で使用する機械です。蒸した茶葉の水分を、葉打ち機である程度飛ばし、さらに粗揉機で熱風を当てながら乾かしていくそう。葉打ち機と粗揉機の両方とも揉み手がついており、同じような機械に見えますが、どのような違いがあるのでしょうか。

 

 山田さん 「葉打ち機と粗揉機の大きな違いは機械のサイズです。葉打ち機の方が大きくて粗揉機の方が小さい。工場内の他の機械でも茶葉を揉んで熱風を加えて、という工程を何度か繰り返していくのですが、茶葉の水分が飛んでどんどん小さくなっていくため、工程を追うごとに、茶葉に合わせて機械も大きいものからコンパクトなものになっていきます」

 

橘ケンチさんも「なるほど!」と感心の様子。茶葉が乾燥して小さくなっていく工程に合わせて機械も小さくなっていくのは、製茶ならではの構造かもしれません。

 

いくつもの機械を通して、ようやくかぶせ茶の荒茶が完成します。茶葉を収穫してその日のうちに工場での荒茶加工を終えなければならないため、収穫時期、茶農家の方は大変な思いをして茶づくりを行っているそう。改めてお茶の有難みを感じる機会となりました。

 

伊勢茶

 

四⽇市市茶業振興センターには売店コーナーもあり、様々なお茶製品が取り揃えられています。かぶせ茶だけで10種以上もの品揃えがあるほか、他の種類のお茶や、お茶を使ったアイスなどお茶の加工品も購⼊可能。(商品の品数や種類は時期によって異なります)興味を持った方は是非訪れてみてください。

 

名称 四日市市茶業振興センター
住所 〒512-1105 三重県四日市市水沢町252-63
電話番号 059-329-3367
公式URL https://www.y-ocha.com/
駐車場 有(無料)
公共交通機関でのアクセス 近鉄四日市またはJR四日市から三重交通「宮妻口」行きバスに乗り「少年自然の家口」で下車(近鉄四日市からは所要時間44分、JR四日市からは所要時間51分)
「少年自然の家口」バス停から徒歩3分
車でのアクセス 東名阪自動車道「鈴鹿インターチェンジ」から8km(約15分)
東名阪自動車道「四日市インターチェンジ」から11km(約20分)
新名神自動車道「菰野インターチェンジ」から12km(約18分)
新名神自動車道「鈴鹿PA(ETC専用IC)」から6km(約10分)

 

「かぶせ茶カフェ」でお茶の味わいを楽しむ

 

伊勢茶

 

「かぶせ茶カフェ」は、お茶農家「マルシゲ清水製茶」が営むカフェ。築70年以上の古民家で、茶葉の品種にこだわったかぶせ茶や、お茶を使ったお菓子を楽しめます。

 

伊勢茶

 

今回いただくのは「のみくらべ膳」(税込1,200円)。

 

のみくらべ膳は、様々な品種のかぶせ茶のほか、玄米茶、ほうじ茶、和紅茶といった豊富なラインナップから3種を選んで飲み比べできるメニューです。お茶に合うお菓子と、お茶をあられにかけていただく「あられ茶漬け」もセットで付いてくるため、様々な味わい方を一挙に楽しむことができます。

 

また、のみくらべ膳は、選んだ3種のうち、どれがどのお茶かを伏せてクイズ形式で提供されます。飲み比べてみて、どのお茶かを当てるのも楽しみの一つ。自分の好みのお茶に出会うきっかけづくりにも良いかもしれません。

 

伊勢茶

 

家族でかぶせ茶カフェを営む清水加奈さんに案内いただきながら飲み比べ用に選んだのは、それぞれ品種の異なるかぶせ茶「そうふう」「さえあかり」「きらり」の3種です。

 

茶葉の特徴

「そうふう」さっぱりとした味わいで、飲んだ後にほのかにジャスミンのお花のような香りが残る

「さえあかり」茹でたトウモロコシや、枝豆のような甘い香り

「きらり」渋みが少なく飲みやすい。お子様にもお勧めの風味

 

 清水さん 「どれも個性的で、飲み比べると味わいの違いがよく分かると思います」

 

清水さんに淹れ方を教わりながら、橘ケンチさんがお茶を淹れていきます。

 

伊勢茶

 

お茶は、四日市市で作られる萬古焼の急須「ひとしずく」で淹れていきます。急須にお湯を入れて2~3分待ったらちょうど飲み頃に。

 

伊勢茶

 

自ら淹れたお茶を一杯ずつ、ゆっくりと味わっていきます。

 

 橘ケンチさん 「さえあかりは、本当にトウモロコシのような甘い香りがしますね! どの品種のかぶせ茶もうま味と甘味がありつつ、それぞれしっかりと個性が立っていて面白いです」

 

「お茶を淹れ終わった後の茶葉(茶ガラ)は、ポン酢をかけて食べると美味しいですよ」と清水さん。茶ガラそのものを食べるのは、良い茶葉でないとできない楽しみ方だそうです。実際に食べてみた橘ケンチさん、「シャキシャキと歯ごたえがあって美味しい!ほうれん草のお浸しみたいですね」と茶ガラの美味しさに驚いている様子でした。

 

伊勢茶

 

今回は、四⽇市市茶業振興センターにて伊勢茶やかぶせ茶について学び、かぶせ茶カフェではその味わいを堪能することができました。

 

水沢町のお茶畑が広がる景色は美しく、かぶせ茶は一度味わったらそのうま味・甘味の虜になること間違いなし。水沢町を訪れることで、他の地域の伊勢茶にも興味を持つきっかけになるかもしれません。是非一度、足を運んでみてください。

 

名称

かぶせ茶カフェ

住所
〒512-1105 四日市市水沢町998
電話番号
059-329-2611
料金

のみくらべ膳/1,200円 (税込) お菓子とあられ茶漬け付き
お茶膳/700円 (税込) お菓子とあられ茶漬け付き
他、季節のメニューがございます。

営業時間

木・金・土  10:00~17:00

休日

月・火・水・日

駐車場

あり(無料)

公共交通機関でのアクセス

三重交通バス 宮妻口行き「三本松」で下車 徒歩約3分

車でのアクセス

県道753号線から県道44号線経由 約10㎞

 

写真 : 鈴木規仁
文 : 駒田早紀(MSLP by new end. Inc.)

 

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