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関宿から伝える。わが町の素晴らしさと、自然の中に身を置く暮らしの豊かさ。

亀山市にある関宿は、東海道五十三次の宿場町で、当時の面影を残した町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されています。そんな関宿で、町の美しい景観を守る人々、亀山の自然や、昔ながらの暮らしの営みの素晴らしさを伝える人々が、それぞれの想いを胸に今日も躍動しています。

関宿とは

 

亀山

 

江戸時代に整備された53ある宿場のうち、東海道五十三次の江戸から数えて47番目がここ、関宿です。
江戸から明治時代の趣を残す町屋が連なり、当時、参勤交代やお伊勢参りで街道を行き来する人々で賑わいを見せていました。

昭和59(1984)年には「国の重要伝統的建造物群保存地区」にも三重県で唯一選定され、人々が一丸となって関宿の昔ながらの町並みをこれからも守っていこうという動きがされています。

町並み保存がされるまで

 

亀山

 

関宿で江戸時代より銘菓「関の戸」を製造・販売する老舗「深川屋」の14代目である服部さん。
自身が生まれ育った関宿の町の魅力、また関宿がどのようにして今日までその景観を美しく保ってきたのかを語ってくれました。

 

亀山

 

昭和の時代のまちづくりは、建物を建てては壊しまた新たに建てるといったスクラップアンドビルド方式で、その時代に好まれるものがどんどんと作られては消えていくやり方が多かったといいます。
「町から若者がどんどん減っていく傾向から新しいものを作ることも間違ってはいないけれど、その影響で町の景観や文化は壊れていく一方でした」

昭和50(1975)年に伝統的建造物群保存地区の制度が発足し、全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存が図られるようになると、関宿もそれにすぐ手を挙げ、服部さんも所属する「東海道関宿まちなみ保存会」が発足しました。

「平成13(2001)年の東海道制定400周年のイベントが近づくにつれ関宿が市外からも注目されるようになったことが、多くの人が自分たちの町の魅力に気づくきっかけとなったと思います」
その頃から町並みを保存しようをいう動きはさらに高まり、まちなみ保存会の活動もさかんになっていったといいます。



「町が大切」という想いを残す

 

亀山

 

その活動のひとつが、「関宿かるた」の制作。
関宿の古い町並みや名所旧跡をテーマにした関宿かるたは、子どもからお年寄りまでさまざまな世代が遊びながら関宿の歴史や文化を知るきっかけとなります。
「今は、この関宿かるたをアレンジして説明をつけた、関宿を歩くバイブルのようなガイドブックを制作中です」と、今後の展開も教えてくれました。

 

亀山

 

「建物を残していくことよりも、この建物や町並みが大切という人の気持ちを残していくほうが難しい。想いをどうつないでいくかが課題です」
町並みを残していくには、人々がその町の魅力を理解し、重要で残していかなくてはならないものだと認識することが大切だと話す服部さん。

日本古来の景色や昔の旅人の姿を彷彿とさせる関宿を誇らしく思うとともに、10年後、50年後に、関宿の町が今以上に素敵な景観を保っていてほしいと活動されています。



蔵のカフェ 茶蔵茶房

 

そんな関宿に新しい風を吹かせたのが、服部さんが経営する、関宿の町並みに馴染むシックな蔵造りのカフェ「茶蔵茶房」です。

 

亀山

 

蔵には、鎧のように板を重ね張っていく「鎧しぶき」をはじめ日本の伝統的な建築技法が用いられ、蔵としての見応えも十分ですが、扉一枚を介した中庭に入ると、そこには目に鮮やかなアートが施された壁が出現。

 

亀山

 

これは、FILAやCOACH などとのコラボレーションも手がけるアーティストSHETA(シータ)氏によるもので、落ち着いた蔵の雰囲気とは真逆とも言えるポップで楽しい空間。
外観に古き趣を保ちつつ現代アートを取り込んだギャップで、関宿に新鮮さをもたらしています。

 

亀山

 

そんな茶蔵茶房で楽しめるのは、自分自身で淹れるセルフドリップ式のコーヒー。
セルフドリップ式を導入しているのは県内でも珍しいといい、自分でコーヒーを淹れる楽しみや味わいの違いなどを体感できると人気です。

 

亀山

 

「茶蔵茶房に続くようにして、関宿にはその後3、4年で15軒ほどの新しい店舗がオープンしましたが、いずれの店舗も関宿の景観に配慮された店構えです。町並みを守ることに誇りをもってきた、関宿ならではの観光地を手探りしている最中です」

 

亀山



而今禾(じこんか)

 

亀山

 

そんな関宿で、衣食住といったライフスタイルをテーマにギャラリーと工房を構える「而今禾」。

「私はもともと陶芸をやっていたのですが、同じようにものづくりをする仲間たちとグループ展を何度も企画・開催するうちに、今の店舗の形となりました」
と話すのは、而今禾をご夫妻で営む米田さん。
ギャラリーには全国各地の作家たちの器や染物、古道具、オリジナルの布製品などが並びます。

 

亀山



暮らしの知恵がつまった正藍染

 

亀山

 

米田さんは、ここ而今禾で、ご自身が学び感じてきた暮らしに関する体験も行なっています。
而今禾のギャラリーから少し歩いたところに、その工房があります。

米田さんが行う体験のひとつが、伝統的な技法で染める「正藍染」。
透明感のある落ち着いた青色は優しく、どこか力強さを感じます。

 

亀山

 

一般に化学染料を使った藍染とは違い、正藍染とは、藍の葉を発酵させて作った蒅(すくも)と広葉樹の灰で作った灰汁(あく)のみで発酵させ、染液の維持にも貝灰など自然由来のものを使用し染め上げたものを指します。

 

亀山

 

漢方薬として中国より伝わった藍。江戸時代には人々の7、8割が藍染の着物を着ていたそうです。
藍染めの抗菌、防臭などの効果を体感していたからこそ、多くの人々が身に着け、旅に出る時には藍の手ぬぐいを持って出るなどの風習があったのでしょう。

また、綿を紡いで糸にし、藍で染め、手織りされて生まれる布は、とても高価なもの。着物としての役目が済むと、おむつや布団皮として利用されました。

 

亀山

 

「藍染にはまず、いい灰汁が必要です。いい灰汁とは、pH値が高い、澄んだ灰汁のこと。
広葉樹の灰と沸かした井戸水で灰汁を作ります。灰汁は洗剤代わりとしても使えるんですよ。灰汁をとった後の灰は、昔から陶器の釉薬に使われてきました。私は、陶芸家の友人にお渡ししています」

体験の中に、昔の人の暮らしの知恵や循環を感じることが出来ます。

 

亀山



F4の可能性とお茶の体験

 

亀山

 

関宿から車で20分ほどの鈴鹿山脈の麓に、米田さんが管理する茶畑があります。
米田さんは、過去に台湾と中国で日本の工芸をマーケティングするにあたり、現地のお茶とコラボレーションした経緯から日本のお茶に目を向けることに繋がり、生産者になりました。そこで、運命的に出会ったのが台湾からやってきた茶樹でした。

その茶樹は「F4」という台湾からきた山茶で、「F」はFORMOSAの「F」=ポルトガル語で「美しい島」を意味し、台湾のことを指すのだそうです。
F4は、日本統治時代の台湾で製茶業をしていた川戸勉氏が終戦後台湾から戻り植えたもので、亀山市にしかありません。川戸氏は紅茶生産を三重県全域に広げ、海外に輸出。生産量、品質共に、三重県を日本一の紅茶産地にしたイノベーターです。

 

亀山

 

而今禾では、そうして作られたお茶を楽しむ体験ができます。
白茶とは、萎凋(いちょう)という工程と乾燥で仕上げる微発酵茶です。
中国には「一年為茶、三年為藥、七年為寶(1年目は茶、3年で薬、7年経った白茶は宝)」という言葉があり、白茶の製法によるものですが、健康や美容にいいとされ、フルーティーな風味に育っていきます。

 

亀山

 

1、2煎目は米田さんが淹れてくれたものを飲み、その後は教わりながら自分でもお茶を淹れていきます。

「茶と茶器は切磋琢磨されながら世に繋がれています」
万古焼といえば急須。米田さんが見せてくれた蓋碗(がいわん)は、万古焼の職人とコラボレーションして作ったものだそう。発酵茶を美味しく淹れられるデザインになっています。

 

亀山

 

ご自身がこれまでに体感した暮らしにまつわる“いいと思うもの”をさまざまなかたちで発信している米田さん。
暮らしの豊かさとはどんなものだと思うかを聞いてみると、
「効率的、便利なものを求める中で失われてきたものが多いと感じています。それは、体感、経験といわれるもので、私たちの感覚(センス)を養うもの。感覚を養うには、リアルに自然の中に身を置き、自分も自然の循環の中に在ることを知ること。自然の色や造形に勝る美しさはなく、天と地から生まれ出てきたものを、いかに繋いでいくか、それが人間の役目なのでしょう」

今ある暮らしの原点に帰り、人は自然のものから多くの恩恵や豊かさをもらってきたことをあらためて実感できます。

 

亀山

 

基本情報

東海道関宿
【住所】亀山市関町木崎、中町、新所
【公式URL】 https://www.city.kameyama.mie.jp/soshiki/seibun/chiikikanko/kankokoryu/docs/2014112312294/

茶蔵茶房
【住所】〒519-1111 亀山市関町新所1765-5
【電話】0595-86-5780
【営業時間】10:00〜16:00
【休業日】木曜、その他不定休

正藍染工房 而今禾
【住所】〒519-1107 亀山市関町木崎250-1
【メール】seki@jikonka.com
【営業時間】公式Instagramよりご確認ください (https://www.instagram.com/jikonka_seki/)
【HP】 https://www.jikonka.com/

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MSLP by new end. Inc.

映像クリエイター、フォトグラファー、デザイナー、ライターなどが所属する三重県のクリエイターチーム。

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