「観光定置網漁モニタリング」は子どもも大人も大興奮な自然体験!漁師さんの船に乗り込み熊野の海へ

掲載日:2021.03.30

訪れる者を壮大な大自然で迎えいれてくれる三重県南部に位置する熊野市。世界遺産 熊野古道や国の名勝・天然記念物「鬼ヶ城」など、見どころ満載な熊野をさらにディープに体感できる新たな観光サービスの準備が進んでいます。今回は、「熊野の海 観光定置網漁モニタリング(仮)」のお試しツアーに参加したご家族とカッコいい漁師さんの働く様子を、熊野の大自然と合わせてご紹介していきます。

漁師さんの朝は早い。夜明け前の磯崎魚市場に全員集合!

「熊野の海 観光定置網漁モニタリング(仮)」を体験するため、磯崎漁港(いそざきぎょこう)に集まった親子2組。

午前5時30分、辺りはまだ暗い中でゴォーというエンジン音と共に船から颯爽と現れた漁師さんたち。
1度目の漁を終えて戻ってきたところで、テキパキと新鮮なお魚の水揚げ作業を進めます。

そんな慌ただしい漁師さんの働く姿を子どもたちは眺めながら、「お父さん、あの船に乗るの?」と不安げな表情。それでも、少しワクワクしている気持ちも伝わってきました。

ライフジャケットもしっかり装着して、船に乗り込み準備万端。
辺りも少し明るくなってきたところで、さぁ熊野の海へ、いざ出港です。

約10分で到着!ゆっくりと安定した船で「魔見ヶ島(マブリカ)前へ

乗り込んだ定置網漁の船は、とても平たくて足場も安定しています。また、比較的ゆっくりと船が進むのでほぼ揺れを感じません。
子どもたちはどこかに掴まることなく、大海原へ進む船の中を散策。「ここには何が入っているの?」「ここはね、空っぽ。」と漁師のお兄さんと楽しく会話する姿も。

そうこうしている間に、磯崎漁港からわずか10分程度で、「魔見ヶ島(まみるがしま) 通称マブリカ」前に到着。

魔見ヶ島は、鬼ヶ城の沖合約1.5kmに浮かぶ無人島。
魔見ヶ島には伝説が残っていて、奈良時代〜平安時代のころに将軍 坂上田村麻呂が鬼ヶ城の鬼(海賊)を、魔見ヶ島に現れ舞い唄った童子から授かった弓矢で征伐したと云われています。

眼前に魔見ヶ島を望みながら、漁師さんたちは船のエンジンを少しずつ緩めて、定置網漁の作業に取り掛かりはじめました。

定置網漁法の仕組み

定置網漁は、幾重もの網を用いてお魚を獲ります。
垣網(かきあみ)、囲網(かこいあみ)、昇り網(のぼりあみ)、そして最後に箱網(はこあみ)までお魚の習性を活かして誘導。定期的に箱網部分を引き揚げます。

こちらが、箱網をたぐりよせている様子。
両端で箱網のロープを機械で巻くことでたぐり寄せ、体感では気づかないほどゆっくりと船は横移動しながら、お魚を端へ端へと追い込んでいきます。

「はーい!」と連携する漁師さんの掛け声が船上に響き、手繰り寄せた網が再び海へと戻されていきます。網は汚れや補修、台風などの異常気象時など以外はマブリカ前に設置し続けます。
網目のサイズや大漁にお魚を獲りすぎないなど、環境にも配慮した漁法としても知られる定置網漁。
定置網の仕組みを事前に予習してから見学してみるのもオススメですよ。

このお魚は何でしょう?漁師のお兄さんお魚クイズ

ゆっくりと箱網の両端を手繰り寄せながらお魚を追い込んでいく作業のかたわら、漁師のお兄さんが船の生簀の蓋をパカッと開けて中を見せてくれました。

「大きな魚がいる!」と子どもたちの興味津々に覗き込みます。

そして、ここで漁師のお兄さんが「このお魚は何でしょう?クイズ」を出題。

ー「このお魚は何でしょう?ちょっと難しいかな?」

触ってみる?こわくないからというお兄さんの言葉に、おそるおそるお魚を指でつつく子どもたち。
大丈夫なことを知ると、笑顔になりました。

ー「これはスズキ、ここがとんがっていて、手が切れたりするから危ないんやよ。」
ー「これはカワハギ、このお魚は鱗がないの。」

と一匹一匹丁寧に説明してくれる漁師のお兄さん。

「エビ!」

ー「エビやね、なんてエビやろう。」

「でっかいエビ!」

ー「でっかいエビか、これは伊勢エビ。」

普段、なかなか間近で見ることのない元気でピチピチなお魚たちを見て、子どもたちの楽しそうな笑い声が船上に響きました。

大漁のお魚とご対面。子どもも大人も大興奮!

箱網の端へお魚を追い込む作業も終盤に差し掛かると、肉眼でお魚の群れをしっかりと確認できます。

ー「忙しなく泳いでいるのは、カタクチイワシ。真ん中らへんでキラキラしとるのは、サバゴ(鯖の子ども)。」

お魚の動きを見るだけで、種類がわかってしまうのは海で働く漁師さんだからこそ。

「いっぱいいるー!」

子どもたちの元気な声が船上にこだまします。

網が引き揚げられてお魚の姿がさらに色濃くなり、子どもたちは大興奮!

「イカー!エビも!」

「おとうさん、こっちきて。イカがいた!」

子どもたちには、なぜかイカが大人気。

水揚げされるお魚は様々で、真鯛にタチウオ、カタクチイワシにグレ、イカにアンコウ、エイなどなど。
ピチピチと跳ねる水しぶきは活きの良いお魚の証拠です。

活きた魚(活魚)は、先ほどの「このお魚は何でしょう?クイズ」の生簀へ。
タモ網でお魚をすくい上げ、魚種やサイズを見極めながら自分の持ち場で漁師さんたちはテキパキと働く姿に見とれてしまいます。

子どもたちが漁師さんのお仕事の邪魔をしないか、ヤキモキするお父さんお母さんの心配とは裏腹に、漁師さんたちは手を動かしながら、お魚に囲まれて過ごす子どもたちの特別な時間を見守っていました。

漁港に戻る時間で帰港のパレード「鳥たちの朝ごはん」

定置網漁でのお魚を船に積み込んだ頃に、ふと、あたりを見渡すとたくさんの鳥たちが飛び回っていました。磯崎漁港に戻るためゆっくりと旋回しはじめる船。すると、漁師のお兄さんが赤い小魚をプラスチックの蓋の上に集めはじめました。

ー「鳥さん達に、この赤いお魚をあげてみよう。」

船に乗り込んだ時はお魚に触れなかった子どもも、いつの間にか触れるようになっているのは間近で漁師さんたちの仕事を目の当たりにしたからでしょう。
子どもたちは小さな手で、小魚をつかみ海に向かって放り投げました。

すると、見事に小魚を捕まえて、飛び去る鳥たち。
トンビは足でバッチリ小魚を掴み、ウミネコはパクっと口でキャッチする様子をばっちり間近で見ることができます。太陽を背にしてゆっくりと磯崎漁港へ向かう船をねぎらうような鳥たちの飛行は、まるでテーマパークのパレードのようです。

鳥たちのお腹がいっぱいになったら、次は自分たちの番。
港に着けば、今度はお待ちかねの「漁師さんの朝ごはん」が待っています。

漁師さん直伝「お魚さばき」を伝授。

磯崎漁港に到着するとすぐに、漁師さん達は水揚げされたお魚を市場に運ぶ準備に取り掛かります。
活魚は船から陸の生簀に移されて、測りに乗せて計量。アジやサバなどのお魚は、魚種やサイズを瞬時に判断して凄まじい速さで選別されていきます。

計量や選別を終えたお魚は、トラックに積み込まれ磯崎漁港から車で約16分の遊木漁港へ運ばれ入札が行われます。

子どもたちは漁師さんたちのお仕事を覗き込みながら、船でよっぽど楽しかったのか漁港でも鳥たちに朝ごはんをあげるのにしばし夢中に。
お魚が触れなかった数時間前が嘘のように、掴み取ることにためらいがありません。

お魚を運ぶ作業が落ち着いてきたところで、漁師さん直伝「魚捌き体験」開始しました。
まずは、プリプリで立派なワラサ(出世魚 ブリになる手前の呼び名)を漁師さんに捌いていただきます。

ー「ワラサの皮はかたいもんで、切れ目をまずいれる。」

漁師さんの包丁さばきに見惚れていると、まるでワラサが柔らかなお豆腐のようにも見えてきます。
太い骨があるところは力任せに切る、などポイントを抑えて丁寧に教えてくれました。

とっても美味しそうなワラサのお造りの出来上がり。

ワラサのお次はアジ。今度は親子で捌きます。
まずは漁師さんからしっかりと捌き方のレクチャーを受け、普段は全くお魚をさばかないというお父さんも真剣な表情です。

ー「まずはしっぽを切って、しっぽからエラにかけて半分を...」

親子で手を取り合いながら、一匹一匹丁寧にさばいていきます。
上手にさばけたら身が多くて、下手くそやと身が少なくなるぞと漁師さん。

捌いたアジの数だけ、どんどん上達していくお父さん。子どもたちよりも、お父さんが夢中に。

ー「ずっと捌いていられますね。」

これから自宅でお魚をさばく時は任せろ、お父さんからそんな心強さが満ち溢れていました。

上手に捌けたアジのお造り。こちらも、とっても美味しそうです。

お魚を上手にさばいたら。漁港でいただく「漁師さんの朝ごはん」。

そして、「熊野の海 観光定置網漁モニタリング(仮)」を締めくくるのが、お待ちかねの漁港でいただく「漁師さんの朝ごはん」です。
ワラサとアジのお造りに加えて、年中食べている漁師めし「魚汁(さかなじる)」も完成!

漁師の魚汁はその名の通り、新鮮で旬のお魚がたっぷり使った漁師めし。
お魚がまるごと入っているので、大人も子どもも驚きます。ワラサのあら、はまち、あじ、さば、むろあじなどなど。
季節によってお魚の内容は変わりますが、「少し脂のあるお魚」を必ず入れることが美味しい魚汁のポイント。

「お父さんこれなに?」

「えらのところ」

「最初に切ったとこ?」

「そうだよ。」

お腹を空かせた子どもたちは、パクパクと美味しそうにお魚を食べます。

つい数時間前に定置網漁で獲れた新鮮なお魚を、自分たちで調理していただくこと。子どもたちにとっても、私たちにとっても貴重な体験になったとお母さん。
「熊野の海 観光定置網漁モニタリング(仮)」を終えて、今度は自宅でお魚を食べる時には、きっと熊野の海や漁師さんたちの姿を思い出すことは想像に難しくないでしょう。

早起きは三文の徳 熊野巡りに出かけよう

「漁師さんの朝ごはん」を食べ終わると時刻は10時過ぎ。食後の運動に、熊野巡りに出かけましょう。
磯崎漁港周辺には、熊野を代表するオススメスポットが目白押しです。
海の上とはまた違う、熊野の大自然を全身で感じることができますよ。

まずは、磯崎漁港や船の上からも見えていた「鬼ヶ城(おにがじょう)」。
世界遺産『紀伊山地の霊場と参詣道』の一部で、荒波で削られた凝灰岩の大岸壁が圧巻で、磯崎漁港から車で6分です。魔見ヶ島や見学した定置網も鬼ヶ城から肉眼で確認できます。

少し頑張って「鬼の見晴台」まで登っていくと、先ほど「漁師さんの朝ごはん」を食べた磯崎漁港を高台から眺められます。
磯崎漁港が見える方向の反対側には、全長約22Kmの日本で一番長い砂礫海岸「七里御浜」の光景が広がっています。また、「鬼の見晴台」から石畳が美しい世界遺産 熊野古道「松本峠」にも徒歩約15分でアクセスできます。

<鬼ヶ城>
住所:〒519-4323 熊野市木本町
電話番号:0597-89-4111(熊野市観光スポーツ交流課)
公式URL:http://onigajyo.jp/
営業時間:9:00~17:00(鬼ヶ城センター)
休業日:年中無休(鬼ヶ城センター)
公共交通機関でのアクセス:JR紀勢本線「熊野市駅」から「大又大久保行き」バス約5分「鬼ヶ城東口」下車すぐ
車でのアクセス:熊野尾鷲道路「熊野大泊IC」から南へ車で約1分
駐車場:有 72台、大型バス 10台、大型バス 18台(鬼ヶ城センター第2駐車場)

磯崎漁港から車で7分。獅子岩や花の窟神社周辺の七里御浜からも、魔見ヶ島や磯崎漁港が見えます。
波しぶきと丸い石が擦れる音が心地よく響き、遠くまで続く海岸線と水平線に息を呑むこと間違いなしです。

<七里御浜 獅子岩周辺>
住所:〒519-4324 熊野市井戸町
電話番号:0597-89-4111(熊野市観光スポーツ交流課)
公式URL:http://kumano-kankou.com/?p=20
休業日:年中無休
料金:無料
公共交通機関でのアクセス:JR紀勢本線「熊野市駅」から徒歩で約10分
車でのアクセス:熊野尾鷲道路熊野大泊ICから国道42号七里御浜沿い、車で新宮方面へ約3分
駐車場:有

「漁師さんの朝ごはん」をいただいてから少し時間が経ち、小腹が空いてきたなら「熊野古道おもてなし館」に立ち寄りましょう。
「熊野古道おもてなし館」は国の登録有形文化財として指定された築130年の古民家を改修した、休憩どころです。テイクアウトの販売や熊野のお土産も取り揃っていますので、気軽に立ち寄ってみてくださいね。

<七里御浜 獅子岩周辺>
住所:熊野市木本町204(本町通り)
電話番号:0597-70-1231
公式URL:http://kumano-kankou.com/
営業時間:9:30~16:30
休業日:月曜日と年末年始(12/30~1/3)
公共交通機関でのアクセス:JR熊野市駅から徒歩約10分
車でのアクセス:熊野尾鷲道路熊野大泊ICから車で約5分

大自然が織りなす、海から始まる熊野巡りへ

令和3年夏頃には「尾鷲北IC~尾鷲南IC」間も開通予定ですので、ますますアクセスが良くなり、さらに気軽に熊野へ出かけられるようになります。休日に熊野へお出かけして、大自然の神秘に触れてみませんか?
「熊野の海 観光定置網漁モニタリング(仮)」は現在、準備を進めています。サービスの提供開始準備が整いましたら、改めてお知らせしますので乞うご期待ください。
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