【美し国・三重 自転車道中記:志摩編】縁起物とグルメを訪ねて海辺をサイクリング!

掲載日:2019.03.13

三重を代表する観光地のひとつ・志摩地方。英虞湾のリアス海岸、雄大な太平洋と岬に屹立する灯台など、写真映えする見どころが点在しています。海の幸はもちろん、それ以外にも地元の人々に愛されるおいしいものもいっぱいです。今回は絶景を楽しめてたっぷり走れるコースです。安心してください、ショートカットもできますよ!

「美し国・三重 自転車道中記」とは?

三重県生まれ三重県育ちの自転車ライター・浅野真則が、三重県の魅力を自転車で巡りながら紹介します!

■旅人 自転車ライター・浅野真則
自転車歴およそ20年。三度の飯+おやつと同じぐらい自転車が好き。自転車を愛するあまり、フリーの自転車ライターに転身。仕事と称して自転車に乗り、プライベートでもレースやロングライドを楽しむ。

三重を代表する観光地のひとつ・志摩地方。英虞湾のリアス海岸、雄大な太平洋と岬に屹立する灯台など、写真映えする見どころが点在しています。
海の幸はもちろん、それ以外にも地元の人々に愛されるおいしいものもいっぱいです。

今回は「もっと走りごたえのあるコースを紹介したい!」ということで、ライター浅野が単独で取材・撮影することに。前回同行した本シリーズ担当、自転車ビギナーの村上はお留守番。

絶景を楽しめてたっぷり走れるコースです。
安心してください、ショートカットもできますよ!

コース:志摩市内
走行距離:68.3㎞
難易度:★★★☆☆

安乗でサイクリストに御利益のあるお守りを授かる

志摩スポーツコミッション


三重県では、海の絶景を楽しみながらサイクリングすることができます。
東紀州編では、七里御浜沿いのなだらかな海岸線に沿って走りましたが、今回は志摩のリアス海岸の入り組んだ海岸線を臨むコースを紹介したいと思います。
同じ県の海なのに、地域によってここまで違う風景が味わえるのは三重ならではかもしれません。

今回のスタート&ゴール地点は、志摩スポーツコミッション。
この地方のサイクルイベントやスポーツイベントを企画・運営する団体で、志摩エリアでサイクリングを楽しんでもらうべく、数々のツーリングコースを作ってwebで公開しています。
さらに手ぶらで来てもサイクリングを楽しめるように、ビアンキのクロスバイクのレンタルを行っているんですって!

志摩スポーツコミッションの詳細はこちら!

志摩へのアクセスは自家用車が便利です。
志摩スポーツコミッションには、隣接するパチンコ店と共用の大きな駐車スペースがあります。電車でアクセスする場合は、近鉄の特急停車駅である鵜方駅まで輪行するのが便利です。

こちらが志摩スポーツコミッションの事務局長・大山純輝さんです。

コースについていろいろ相談してみました。
「今回は安乗(あのり)岬に行って、大王(だいおう)埼に行って、国道260号で和具(わぐ)まで行って、最後はともやま展望台の夕景も楽しもうって欲張りなコースを考えているんですが……」
「かなり走りごたえがありそうですが、見どころいっぱいでいいですね!行きたいところだけ選んでいただければショートコースも作れますから、脚力に自信がなくても楽しんでいただけると思いますよ!」

というわけで、お墨付きをいただきました!
走ることを愛してやまないサイクリストの皆さん、お待たせしました!
今回は僕の独断でたっぷり走れるコースを紹介しちゃいます!

大山さんにはこの後も地元のお店の話をうかがったり、今回のルートではない的矢湾とか浜島方面のコースの情報(浜島方面の一部ルートには東紀州にあった自転車サインマークがあるらしい!)もうかがったりしました。

もちろん志摩ならではの新しい旅のアイデアも教えていただきましたよ!
これはもう一度志摩に来なきゃ!大山さんに見送っていただき、いよいよ出発です!


志摩スポーツコミッションから国道260号へ出て、長沢交差点を左折。

道なりに東進すると緩やかな下りの後、急に視界が広がりました。遠方まで見通せる開けた田園風景をかなり長い直線道路が走っています。

実はここ、先ほど大山さんに教えていただいたスポットです。
志摩というと海沿いの絶景ルートがイメージされますが、こういう場所もあるんですね。
県道61号との交差点を左折し、最初の目的地安乗岬方面に向かいます。

安乗(あのり)神社

安乗岬への道のりは、短めの上りが断続的に現れます。
志摩は高い山があるイメージではありませんが、地形は起伏に富んでいます。
脚に疲れをためないよう、こまめにギヤを変え、気持ちよく感じられるペースで走ります。

安乗埼灯台の案内看板にしたがって右折し、道なりに進むと、やがて堤防道路のような道になり、右手に海が見えてきました!さらに目の前に結構な急勾配も!

この坂を上りきったところあたりに安乗神社がありました。
僕はどうしても今回、安乗神社にお参りしたかったのです。なぜなら自転車乗りの交通安全を願うお守りを授けてくださるからです。

自転車を止め、お手水で手と口を清めたら、まずはお参り。今回も道中の安全を願ってきました。

そして社務所でお守りを授けていただきます。
これが今回の旅のお目当てのひとつ、自転車交通安全守です!初穂料は800円。

勘のいい読者ならお気づきかもしれませんが、安乗という地名は、安全の「安」に「乗」ると書き、「安全に乗る」ことに通じます。
つまり、「サイクリストの交通安全を願うなら、安乗神社のお守りほど御利益のあるお守りはない!」と思うわけです。

お守りを授けてくださった禰宜の片山崇さんに神社の歴史についてうかがいました。
「安乗神社は、明治末期にこの地域の神社をまとめて祀って生まれました。かつてここは八幡社で、文禄の役に出征した九鬼嘉隆率いる九鬼水軍の一行が参拝し、安全に航海して戦功を上げて凱旋したと言われています。これがきっかけで、このあたりの地名である“あのり”の表記が畔乗から安乗になったと言われているんですよ」

そのころから安全に関して御利益があったのですね。
ちなみに最近は、サイクリストも車のドライバーも交通安全祈願にいらっしゃるそうです。

安乗と大王、ふたつの灯台を訪ねて

安乗埼(あのりざき)灯台


安乗神社から安乗埼灯台は目と鼻の先です。ここまで来たのでぜひ足を運びましょう。
狭くて迷路のように曲がりくねった路地を進むと、安乗埼灯台のある安乗岬園地に到着。

園内には自転車では入れないので、駐車場のバイクラックに自転車を止めて歩いて行く必要があります。
青空と海をバックに岬に屹立する白亜の灯台は、これ以上ない美しい組み合わせです!
安乗埼灯台は、灯台内部も一般公開されています。

今回は時間が押していたので立ち寄りませんでしたが、灯台の上からは太平洋を一望できますよ!

阿児(あご)の松原海水浴場

再び来た道を戻って大王埼方面に南下します。
安乗岬園地から6kmほど走ったところで左手に阿児の松原海水浴場が見えてきました!

堤防から砂浜に続く階段状の堤防に腰掛ければ、潮騒と潮風を感じながら海を眺めて一休みすることができます。
堤防道路に上るところには自転車を駐輪するスペースもあるので、おにぎりなどを持ってきてここで軽く食べながら一息つくのも良さそうです。

大王埼灯台

断続的に短い上りと下りを繰り返す県道61号を快調なペースで南下し、三叉路の中央に中州がある特徴的な交差点を左折。

コース随一の長い下りを過ぎると波切(なきり)漁港が目の前に現れました。
次の目的地、大王埼灯台はもうすぐです。大王埼灯台には自転車では近くまで行けないので、今回は灯台の北側の堤防道路まで自転車で行って遠目から眺めました。
このアングルからは初めて見ましたが、どの角度から見ても絵になる灯台です。
大王埼灯台も一般公開されているので、興味のある方はぜひ訪ねてみてください。

先志摩半島のグルメと御利益スポットを巡る

片田稲荷神社

安乗と大王の2つの灯台を巡ったら、次は先志摩半島の先端を目指します。

国道260号まで上ったら、左折して国道260号へ。深谷水道を超えてすぐの深谷大橋西交差点を左折すると、すぐに左手に大野浜、右手に片田稲荷神社が現れます。

400年ほど前にこの地区の住民の手によって建てられたこの神社は、海上安全に御利益があるとされます。
いくつも立ち並ぶ朱色の鳥居が青空に映えるさまは必見です。本殿には絵天井もあります。
拝観したい場合は、社務所を訪ねましょう(誰もいない場合は社務所に掲示されている電話番号に連絡すると対応してくださるそうです)。

片田稲荷神社の詳しい取材記事はこちら!

個人的には片田稲荷神社の目の前に広がる大野浜は、このコース随一の絶景スポットです。

国道を左折して視界に大野浜が広がる瞬間は、今回のコースのハイライトのひとつと言っても過言ではありません!

さて、ここまで30km以上走ってそろそろ小腹が空いてきました。
次はとっておきのグルメスポットを目指します!

大田屋

国道260号を西に進み、和具の中心街にある信号交差点を右折。
200mほど進むと右手に地元で人気の鯛焼き店・大田屋があります。

ここは1匹ずつ鋳物の鯛焼き型で焼く昔ながらの製法を守っているのが特徴。
鯛焼き愛好家の間で“天然物”と呼ばれるこのタイプの鯛焼きを食べられるお店は、今ではかなり珍しいのではないでしょうか。

味はあんとクリーム、両方を一度に食べられるミックスの3種類で、いずれも1匹130円です。
おなかがすいているので、あんとクリームを一匹ずつ注文しました。

「うちはあんこも自分とこで作っとるんさ。ちょうど炊きあがったところやで、ちょっと食べてみるか?」
御年85歳のご主人・大田若佐さんが厨房に招き入れてくれ、湯気の上がる鍋からあんをスプーンですくって食べさせてくれました。

「あんこだけでもおいしい……!」
大げさではなく、空腹の僕の体中の細胞が喜んでいる気がします。あまりのおいしさに感動していると、大田さんが鯛焼きを作り始めました。
慣れた手つきで鋳型に皮の材料とあんを入れ、リズミカルにひっくり返して焼いています。

「型は重くないですか?」
「1つ2kgや。持ってみ」
「……うわっ、重い!」
「あっはっは、『およげ!たいやきくん』がヒットしたころは朝から晩まで1日中これで鯛焼きを焼き続けてたんやで!」

なんて話しているうちに「はい、お待ちどおさん!」と山田さん。
熱々を受け取ってお店の中でいただきます!

大田屋の鯛焼きは、しっぽが大きくて躍動感があって、いかにもイキの良さそうな見た目です。

手に取ると皮はまだパリパリ、湯気も上がっています。
しっぽまでしっかりあんこが詰まっていて、ほどよく甘いあんこと皮の相性も抜群で、それはもう美味でした。

クリーム入りもおいしかったですが、僕は断然あんのほうがおすすめです!

【基本情報】
大田屋
住所 志摩市志摩町和具1939
電話番号 0599-85-6607

海女小屋体験施設さとうみ庵

伊勢志摩らしいグルメといえば、海鮮料理も外せません!
地元の方の情報では、さとうみ庵の海女小屋で味わう海鮮料理は中でもおすすめとか!

予約が必要ですが、基本コースとしてヒオウギ貝やサザエ、するめいか、干物などが食べられるほか、漁がある時期には伊勢エビやアワビも食べられるんです!

【写真提供:海女小屋体験施設さとうみ庵】

しかも現役の海女さんが焼いてくれて、いろいろお話も聞けるそうです。

今回僕は立ち寄ることができませんでしたが、ここで食事をするためにまたゆっくりと訪れたいな、と思っているぐらいです!

【基本情報】
海女小屋体験施設さとうみ庵
住所 志摩市志摩町越賀2279
電話番号 0599‐85‐1212
公式サイト  https://satoumian.com/

御座港の石仏

さとうみ庵を出発し、さらに西に進むと、ついに先志摩半島の先端・御座に到着しました!

港の向こうには浜島が見えます。ついに先志摩半島の最果てに来たんだなぁ、と実感します。
御座港の西端には、石仏がいらっしゃいます。この石仏は潮仏とも呼ばれ、潮の満ち引きによって現れたり海中に沈んだりするそうです。

特に下半身の病の快癒や子宝を授かりたいという願いに御利益があるとか。
僕は男性ですが、自転車では下半身が重要なので、これからも楽しく自転車に乗り続けられるようにお祈りして御座港を後にしました。

志摩パールブリッジ

帰りは先志摩半島の英虞湾側を通る国道260号のバイパスを東に向かいます。
道幅が広く、道路も直線的で、かなり走りやすいです。この国道260号バイパスの見どころは、個性的な形の3つの橋。

西から志摩パールブリッジ、丸山橋、長田橋です。
このうち、志摩パールブリッジは、文字通り真珠を思わせる白いアーチが特徴で、長さは234mあります。志摩を象徴する新名所と言っても過言ではありません!

志摩丸山橋は橋の中央にある橋脚が空に向かって延び、そこから数十本のケーブルが道路を支えるように伸びています。モダンなデザインで開放感もあり、英虞湾を一望できます。
さらに長田橋は無骨な鉄骨のアーチが印象的で、どこかクラシックな鉄橋。
三者三様の個性が光っています。
国道260号バイパスは「日本の道百選」にも輝いていますが、本当に走っていて気持ちよく、絶景も楽しめる魅力的な道だと納得です。

ともやま展望台

最後の目的地はともやま展望台です。
英虞湾に夕日が沈む場面を堪能できるので、余力があればぜひ立ち寄っていただきたい場所です。

とはいえ、展望台までの道も小刻みなアップダウンを繰り返します。
ここまでそこそこ距離を走っているので、体力に自信がない人にはちょっとハードかもしれませんが、頑張った人だけが楽しめる絶景がそこにはあります!

英虞湾の夕焼けを楽しんだら、後はスタート地点に戻るだけ。とはいえ、まだ10km以上あります。
だんだん薄暗くなってくるので、安全第一で気をつけて帰りましょう。

今回は一人で取材に行ったので、かなりたっぷり走るコースを紹介しました。
実は今回のコースは安乗方面、大王方面、ともやま方面、先志摩方面と大きく4つに分けられるので、体力に自信がない方は行きたい方面だけピックアップして行くこともできます。

お守りが気になる方は安乗にだけ行ってもいいですし、灯台好きなら安乗と大王の灯台を巡って帰ってきてもいいでしょう。安乗・大王・ともやまコースや、先志摩半島をぐるっと回って帰ってくるコースもおすすめです。

もちろん、今回紹介できなかった的矢方面や浜島方面も魅力的なコースなので、いずれまた機会を見て紹介できればと思います!

【今回のルート】

記事作成/浅野真則

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